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2006年12月10日 (日)

BTOU2006レポート ETAP3(8月9日) その1

ETAP-3 ARVAYHEER-BAYAN HONGOR
SS-1:151.57Km L:59.79Km SS-2:215.36Km Total:426.72Km

誰が辿るというのだろうか、このか細いピストを。行く手を石に覆われたピストがしばしば阻む。そこは牧歌的で叙情的だが迷宮のようなルート、困難だが美しい。峠の手前114.99kmにある橋は注意!数本の丸太の橋だ。峠に至る広々とした尾根は、天候が崩れると注意が必要になる。118.59kmの日本の名ラリーストの名を冠した峠を越え、一気に高度を下げる。左下に見える岩が目印だ。ピストを丁寧になぞる。山を降りるとピスト脇は湿地だ。注意深く進めばこの日2つあるうちの1本目のスペシャルを終える。リエゾンは快適な風景のなかを町に向かう。空港の脇から2本目のスペシャル。全く印象の違う2つ目のスペシャルは、まさに高速でゴビを駆け抜けるそれだ。峠を越えたゆえに手に入れる素晴らしい世界、ドラマの始まりを予感させる。エコ部門は2つ目のスペシャルには向かわずにビバークへ。この日まで給油は各自で。集計方法は前日と同じだ。エコチャレンジにアドバンテージが与えられるのはこの2日間のみだ。

誰かが寝袋から出る音がする。
疲れで深い眠りに落ちてはいたが、神経は緊張していた。
おそらく、ETAP3の準備が始まるのだろう。
なかなか浮上してこない意識を、再び沈めないように頭を振りながら、ゆっくりと目を開ける。
テントの中は暗かったが、誰かが点けたLEDランプの明かりがテントの中をさまよっていた。
何とか目を開け、時計のバックライトを点けて時刻を確認する。やはり5時だった。
上半身を起こすと、ゲルの対角の位置にいる男が、寝袋を出て、バックを探っているところだった。
「おはようございます」
声をかけると、すぐに挨拶が返ってきた。「おはようございます、昨日遅かったんですか」
昨日、就寝時には居なかった自分が声をかけたのだ。少しは驚いたかもしれない。
「ちょっとミスコースして、帰ったのは夜でした」
簡単に経緯を説明しながらテントを見回す。
テントの内部には自分を含めて5名。
ドアをはさんで左側に、まだ寝袋に入っていた、その後仲井さんだと知る男性。
その左には、挨拶を交わした男性、前田さん。
その左には、まだ起きてきていない男性、その後浅からぬ縁となる菅原さん。
そしてその左、つまり自分の右隣には、CRM80で参戦していた大泉さんがいた。
このポジションは、ラリーが終わるまで、定位置になった。

「菅原さん・・・、5時ですよ」
前田さんが、菅原さんに声をかける。
「おお」と、短い返事が聞こえ、めがねをかけながら菅原さんが体を起こした。
「おはようさん」
菅原さんの声と同時に、テントの内部に少しづつ動きが出始める。
前田さんと菅原さんが、昨日の出来事と、今日のコースの予想について話を進めるのを背に、今日の装備を確認する。基本的に新たに準備するものは無い。
はいていた寝巻きのジャージを脱ぎ、MXソックスを新しくし、MXパンツとMXジャージを着込む。モンゴルの朝はやはり寒いため、フリースを着る。
GPSの電池交換。エマージェンシーマップの確認。水に溶かすスポーツ飲料の粉末。
食事前に行うべき準備を淡々と進める。
昨日の疲れは、まだ残っているが、思っていたほど重くは無い。
眠気によるだるさは、この凛とした寒気が、祓ってくれるだろう。

いつしか、テント内の住民は全員起き出し、それぞれ忙しく準備を始めていた。
「昨日、水没したんですよ」
菅原さんや前田さんに声をかけたのは、仲井さんだ。
どうやら、昨日、自分たちが夜の直前で渡った川で水没させたらしい。
押して渡れて良かった。そう思えた。
「オイル、少し白くなっているんですけど、まずいですかね」
仲井さんが、自らの不安を正直に菅原さんたちに明かす。
「変えたほうがいい。白くなったオイルは潤滑の役割を果たさないよ」
菅原さんの明確な答えだ。
「分かりました、スタートまでに変えます」
すっきりしたのだろう。仲井さんの返事は澄んでいた。

5時20分ころ、食器を持ってゲルを這い出す。
周囲はまだ暗く、しかし、レストランの周りのテーブル席には、多くの人が腰を下ろし、朝の食事を始めていた。
朝のメニューは、ご飯、味噌汁、お茶ずけ、外人用のパスタといったものだった。
体が冷えているので、内部から暖を取るためお茶ずけを選択し、パスタも少々取る。
テーブルに着き、5時半からライダースミーティングに間に合うように、急ぎそれらを掻きこむ。

食事が終わったころ、ライダースミーティング開始。
山田さんの若干小さい声を聞き漏らさないように円形に囲む参加者たち。
特に今日は、BTOU2006のひとつの山場である、標高3000m級のスガワラ峠を越えるのだ。
試走時には雪があったため、ここがピストだろうといった場所を通過したので、コマ図に違いがあるかもしれない。下り勾配は急だ。
後半は、ゴビハイウェイ。
山田さんの声を聞きつつ、一瞬、コースのイメージが意識に溢れ、話を聞き逃しそうになるが、それらの情報を聞き逃すまいと必死にメモを取った。

ミーティング終了後、キャンプの周りを見渡し、誰も居ないであろう平原に向けて歩き出す。手にはスコップと紙を手にしている。
小さなクレパスの谷間が、その日のトイレだった。

6時、エコクラスのスタートが始まる。
1時間の時間差があるとはいえ、スタートが始まるとキャンプの空気が引き締まる。
ゲルに戻り、プロテクターなど装備を身につけ、荷物をヘリに運ぶ準備をする。
案の定、ブーツの中は冷たく湿ってはいたが、我慢できないレベルではなさそうだ。
ヘリはゲルからは遠く、だるい体に悪態をつきつつ、ダッフルバックを運んだ。
そのご、レストランでランチパックを受け取り、6時30分 出発の準備を終えた。

「まいどー、まいどー、のむらさーん、元気ですか」
スタート位置にバイクを運ぶと、頭のてっぺんを突き抜けるような明るい声で、#36三谷さんが声をかけてくる。
彼とは、福井のJET'sというチームに所属する知り合いで、そのハイテンションぶりは良く知っていう。
まあ、いつものことだ、こちらもいつものようにテンションを上げて答える。
「元気ッすよ。ところで昨日、何でRCPに戻ったんですか」
そう、昨日RCPからゴールに向かう最中、RCPに向かって戻っていく三谷さんとすれ違っていたのだ。
「それが聞いてくださいよ。マップケースのステーが折れたんですよ」
どうやら、走行中にマップケースのステーが折れたらしい。
ETAP2は、RCPからゴールまで短距離で移動できるショートカットが設定されていた。
そのままゴールを目指すか、RCPに戻りショートカットするか、三谷さんはショートカットして出来るだけ早くキャンプ地に着き、信頼できるメカニックに預ける方法を選んだらしい。
どうやら、それが効を奏し、マップホルダーも直り、今日も無事スタートできるようだ。
ただ、CP不通過のペナルティは課せられ、3時間のペナルティを背負った彼は、昨日深夜に帰った私の後方からスタートすることになったようだ。
初日の、ICOのセンサートラブルに加え、2日目のナビゲーション周りのトラブル。
彼のラリーは、前半に山場があったようだ。

自分の前方には、#33桑島さんが並んでいたので、挨拶を交わす。
昨日はきつかったですね。と、そんな話も笑いながらする彼女の様子から、昨日の疲れが回復しているようで、安心した。

7時。再度スタートが始まる。
空は既に透き通る青に変わり、暖かな日差しが溢れ始めていた。
XRのエンジンを始動。今日は、あっけなくエンジンが目を覚ます。
結局、昨日エンジンの始動でトラブったことが、その後のミスコースや夜間走行の原因になったのではないだろうか。
後続が少ない位置で走行すると、迷った場合に、人と確認することが出来ない。
人に判断をゆだねるのは危険だが、誰とも会わない位置で走行するのも問題が多そうだ。
ともかく、今日はミスコースを減らし、中盤を走るようにしよう。

Fh01132 


「野村さん。カードです」
今日の考えをまとめていると、目の前にチェックカードが差し出される。
いよいよスタートが近い。
「ノムラさーん、後ろからがんがん行きますよ。バトルしましょう」
三谷さんの声が聞こえる。
「今日は、自分のペースで行きます、先行っててください」
自分に言い聞かせるように、三谷さんのハイテンションなエネルギーをかわす。
冷静に、ミスコースをしたらすぐに戻る。
しかし、一方で、スガワラ峠で出会うであろう、灰色の岩山を抜けて広がるパノラマを思い浮かべ、高鳴る気持ちを抑えられない自分が居た。

ETAP3スタート。
怪我、消耗という負債を抱えていない、余裕を残したスタートだった。

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コメント

ちわんこ!懐かしいですね、あの日、私の初めての川渡りでした。
知らぬが仏!躊躇せず、そのまま突っ込み!
運よく抜けられましたが、あんなに水の抵抗が大きいとは思いませんでした。高トルクなバイクのおかげでした。
続きを楽しみにしています。

投稿: 天丼まん | 2006年12月11日 (月) 20時49分

毎度です!
のむらさん相当記憶力良いですよね・・・毎日日記つけてたとか?
自分の話題があると、その時の映像がリアルによみがえってきて、とても楽しいです。
だけど「毎朝最後に起きてくるのは仲井さん」って書かないで~(笑)
しかしラリーパパには私も元気を沢山もらいました。笑いすぎて体力を奪われる事もありましたが・・・。

投稿: のりお | 2006年12月11日 (月) 21時01分

のりおさん

 日記は初日でリタイアしました
 ゾーモットとか、早く帰れた日とかに、少しだけメモをとっていました。
 レポートを書き始めてから、忘れそうなところのメモを追加したりもしました。
 でも、やはり今回のラリーはすごく記憶が鮮明なんですよね。路面が思い出せるくらい。
 すぐに忘れると思ったんですが、忘れないので、早く書こうと言う焦りが出ず、遅筆になるのがデメリットですね。

天丼まんさん
 どうにかして、ラリーパパさんと天丼まんさんの漫才を入れたいと思います。
 楽しみにしていてください。

投稿: ノムラ | 2006年12月11日 (月) 22時30分

人を煽るだけ煽っておいて、いつもマイペースのラリーパパです。笑
でも、あの日は最後尾スタートだったので、結構ペースを上げたんですが、ノムラさんには結局追いつけませんでした。笑
スタートの時には「先に抜いて行って下さい。マイペースで行きますから…」なんて仰ってましたが、う・そ・つ・き…笑
バリバリヤル気満々の走りでしたね。

投稿: ラリーパパ | 2006年12月12日 (火) 22時08分

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